2026年5月15日(金)、帝国ホテル東京にて日本ホテル協会主催の「第3回mottECO勉強会」が開催されました。また、7月27日(月)には、ホテルメトロポリタン エドモントでmottECO普及コンソーシアム主催の「mottECO FESTA 2026」が開催。mottECO(モッテコ)とは、飲食店で食べきれなかった料理を「お客様の自己責任で」持ち帰る行為のこと。大勢の参加者を集めて関心の高さがうかがえた勉強会/催しの概要をレポートします。

食べ残し持ち帰りへの理解を深める「勉強会」
食べ残した料理を持ち帰る「mottECO(モッテコ)」運動は、食品ロス削減の観点から全国規模で加速する官民連携の取り組みだ。参画を表明するホテルや飲食店は年を追うごとに拡大中。その普及促進を目的に活動するmottECO普及コンソーシアムには、事業者・自治体・大学などをまたいで50近くの団体が加盟する(2026年7月現在)。
日本ホテル協会でも2024年より、会員ホテルを対象に「mottECO勉強会」を毎年開催。第3回を迎えた今回は、消費者庁、環境省の担当者による食品ロス削減にまつわる最新事情に続き、3つの会員ホテルから取り組み事例を発表。また、会員ホテル対象のアンケート調査結果をもとに、ホテルが直面する課題を踏まえた議論が行われた。
「この勉強会を、ホテルにおける食品ロス削減の契機としましょう」──日本ホテル協会SDGs委員会委員長の定保英弥氏(帝国ホテル取締役会長執行役員)の挨拶に続いて登壇したのは、消費者庁食品ロス削減推進室室長の田中誠氏。年間約464万トンにも上る食品ロスの現状を示し、経済的・環境的に過大な負荷の解消は国家的課題であるとして理解を求めた。また、その有効な施策が外食産業における「食べ残し持ち帰り促進」であるとして、2024年12月に消費者庁と厚生労働省がまとめた「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」を紹介。法的・衛生的な責任の考え方や注意事項を整理したもので、田中氏はその要点を分かりやすく解説した。
▶食べ残し持ち帰り促進ガイドライン 概要 本文
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次いで登壇した環境省資源循環課課長補佐の村井辰太朗氏は、この4月に環境省が作成した「mottECO導入の手引き」について解説。前述の「ガイドライン」が、事業者と消費者に求められる行動について整理したものであるのに対し、この「手引き」は、実際に事業者がmottECOに取り組む上での検討・準備の具体的な内容を示したもの。食べ残し発生状況などの「現状把握」に始まり、料理の選定やルール策定といった「事前検討」、予算や資材調達などの「具体的準備」、実施後の「効果測定、確認・改善」へと流れる手順がまとめられている。

ホテルの先進事例に学ぶ「mottECO」の進め方
▶帝国ホテル東京・大阪
勉強会の後半は、会員ホテルによるmottECO取り組み事例の紹介へ。
帝国ホテルでは2021年から、経時的な劣化が少ないパンや焼き菓子を対象に持ち帰りサービスを先行して始めていた。その実績を踏まえ、2024年12月に「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」が発表されたのを機に導入拡大の検討に着手。「食の安全」確保を大前提に、食品衛生担当部門や調理部門、接客サービス部門が連携して準備を進めた。帝国ホテル独自の安全基準を再定義するほか、対象メニューの選定と管理体制の構築、お客様対応を含む運用ルールを策定。お客様からご要望があった場合にのみ対応するなど、細部の仕組みを詰めたという。2025年11月、東京・大阪のレストラン・宴会場でmottECO導入開始。2026年3月時点で227件の実績である。
出典:帝国ホテル講演資料より
▶ロイヤルホテル
「レストランからのスモールスタート」を実践するのはロイヤルホテル。「食品ロス削減は避けては通れない課題」との認識に立ち、「食べ残し持ち帰りと食の安全をどう両立するか」を論点にベネフィットとリスクの両面から検討を重ねた。「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」も踏まえ、「食品ロス削減」「社会的役割」「食の安全」の3要素が同時に成り立つ形を追求した結果、レストランに限定して導入する「スモールスタート」の方針を決定。現場任せにならないよう、運用手順書を整備し、判断基準や手順を各店で共有するとともにスタッフ研修も行って、意義・目的・ルールの浸透を図った。実施後の所感として、「限定運用のため現場の理解が得られやすかった」「運用手順の厳しさが現場の安心感につながった」などの利点が挙げられている。
出典:ロイヤルホテル講演資料より
▶SHIROYAMA HOTEL kagoshima
3つ目の事例は鹿児島のSHIROYAMA HOTEL kagoshimaから。ここでは食品ロス削減につながる取り組みを4つの側面から展開。3010運動やmottECOからなる「食べ残し」対策は、「調理くず」「製造かす」「売れ残り」の各対策と並ぶ一つに位置付けられている。宴会開始後の30分間と終了前の10分間は着席して飲食することを推奨する3010運動をmottECOとセットで運用しているのは、「持ち帰り」ではなく「食べきり」を前提としてもらうための工夫である。mottECOは2023年11月にトライアルで導入を始め、翌年4月より本格導入。ホームページやパンフレットで紹介するなどして周知を図ってきた。宴会場ではお客様向けの案内も徹底。持ち帰り可能なメニューはあらかじめ明示するなどして協力を求めている。2025年度までの実績で、容器の利用個数は約800個、食品ロス削減量は約200kgとなっている。
出典:SHIROYAMA HOTEL kagoshima講演資料より
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「認知」から「導入」へ、さらなる普及活動を
会員ホテルにおけるmottECO活動の実態は、当協会が行った「食品ロス削減の取り組みに関するアンケート」の結果にも表れている(2026年5月実施/有効回答数55)。それによると、回答したホテルにおける「mottECO」の認知度は95%と非常に高いといえる一方、実施率は38%に留まることが分かった。「実施していない」と答えたホテルのうち、mottECOの導入を「検討している」が21%、「検討しているが課題があり準備が進まない」が35%、「検討していない」が44%だった。
検討していない理由としては、「衛生管理の課題(持ち帰り後の管理ができないため)」と「食中毒のリスク回避(食中毒発生時の法的責任やトラブル防止)」が上位を占めており、法的・衛生的な懸念がなお導入障壁となっている実情がうかがえた。
今後の要望事項としては、 「mottECO 導入のテキストがほしい」「勉強会を開催してほしい」「個別のアドバイスがほしい」などが挙げられている。

今回の調査は限られた回答数であるため、必ずしもホテル業界全体の動向を表すものではないが、食品ロス削減の観点からmottECOへの理解を広めるため、さらなる啓蒙活動が求められる状況といえそうだ。最後に登壇者を交えた意見交換でファシリテーターを務めた当協会SDGs委員会委員の松田秀明氏(日本ホテル顧問 エグゼクティブアドバイザー)は、以下のように述べている。
「ホテル経営にとって環境への配慮は不可欠の課題であることに鑑み、ぜひ他のホテルの先行事例を参考に、mottECOの導入に向けて検討を進めてほしいと思います」
mottECO普及コンソーシアムが毎年開催する「mottECO FESTA」はそうした事例収集、情報交流の場でもある。今年7 月の第4 回イベントでは、産官学民の連携で約580 名が来場。会場では、食品ロス削減のテーマを中心に、講演、事例発表、パネルディスカッション、展示ブースや、当協会会員ホテルによる「もったいないメニュー」の試食などが行われ、多くの人でにぎわった。「食べ残し持ち帰り」に関する社会の関心は確実に高まっている。

取材・文/編集部
(2026.08 Vol. 757)





