日本ホテル協会 第7回社会的貢献会長表彰

最優秀賞
「捨てずに循環(まわ)す」で始める
サーキュラーエコノミー

SHIROYAMA HOTEL kagoshima

木の梁が印象的なレストラン内のビュッフェカウンター。サラダや料理が並び、温菜用の器が並ぶ開放的なダイニング空間。

食品残渣→堆肥→作物→食材のサイクルが完成

SHIROYAMA HOTEL kagoshimaのSDGsは、「循環」というキーワードのもとで大きく飛躍した。資源の再利用や循環経済の歯車が、さまざまな分野で軽快に回り始めている。

食品残渣の循環は代表的な例だ。まず2024年11月に高温発酵乾燥処理装置を導入して、食品残渣をコンポスト化する実証事業をスタート。2025年の春には、でき上がった堆肥を県内の農業法人に提供し、作物を育ててもらう流れをつくった。そして同年5月、寄付した堆肥で育てられた野菜の仕入れを、イタリアンレストラン「ホルト」で開始したことで、完全な資源循環型の食材提供を実現した。

収穫されたばかりの玉ねぎが土の上に並び、葉と根が付いた状態で畑に置かれている様子。
「サステナブル meets ベジタブル」と書かれた案内パネルがバイキング会場に設置されている様子。食品ロスを堆肥化して野菜を育てる取り組みを紹介し、ジャガイモや葉物野菜などの写真とイラストが掲載されている。

調理くずや食べ残しを原料にした堆肥で育てられた野菜を、イタリアンレストランのバイキングで楽しむことができる。

一方、漁協や専門家と共に取り組む海の藻場再生活動では、思いがけない副産物と出合うこととなった。大切な藻場を食い荒らすイスズミという魚だ。しかも独特の臭みが嫌われて、市場価値もほとんどない。この海の厄介者を、何とか食べて駆除できないか。そう考えたシェフと漁協が試行錯誤を重ねた結果、ついにお造りや焼き物など、さまざまな料理に利用できるようになった。捕獲したら捨てるしかなかった厄介者が、新たな食材となったのだ。「臭みも全く気にならず、おいしかった」と評判も上々だ。

赤い背景の上に置かれた二段重の弁当。刺身やいくらが乗ったご飯、天ぷら、肉料理、煮物、卵焼き、野菜料理、フルーツなどが彩り豊かに詰められている。
海の厄介者とされてきたイスズミを、西京焼きや天ぷらで楽しむ「イスズミアレンジ弁当」。

食品ロスと循環経済を学ぶ研修会を実施

SHIROYAMA HOTEL kagoshimaでは、食べ残した料理を客が自己責任で持ち帰る、「mottECO(モッテコ)」という取り組みを、「3010(さんまるいちまる)運動」に加えて宴席に導入している。mottECOは環境省が推進する食品ロス対策なのだが、認知度はまだ高いとはいえない。「九州でmottECOがなかなか広がらないのは、導入店が少ないからなのです。こういう方法があること自体、知られていません」と、企画広報部長の安川あかねさん。そこで昨年の秋、「mottECO普及コンソーシアム」の代表を迎え、同コンソーシアム、およびかごしま環境未来館との共催で、市民向けの「食品ロス削減研修会」を開催した。

「飲食店やホテルからも多数参加されて、『当ホテルではこの夏、アフタヌーンティーでもmottECOを実施して、女性のお客様にすごく喜ばれましたよ』と話すと、興味深くお聞きいただけたようです。『さっそく前向きに検討します』というホテルさんもありました。一軒でも多くの施設がmottECOを導入すれば、食品ロスの削減はもっと進むと思います」

食品以外の「循環」にも力を入れた。2022年に完了した大規模客室リニューアルの際は、資源循環の地域拠点「サーキュラーパーク九州(CPQ)」と提携して、大量に出た備品や什器などの廃棄物を高次元で再資源化。今回は、そのCPQと再びタイアップし、支配人、各部署の長、実務担当者のおよそ20名を対象に、2日間の研修プログラムを実施した。

パソコンはどのような部品でできていて、何がどう資源循環されるのか。CPQの工場で実際にパソコンを解体してみて、初めてよく分かった。廃棄物の削減・再資源化、エネルギー効率化など、ホテル事業においてSDGsに直結する課題は何なのか。その改善のために、どのような取り組みが考えられるか。ワークショップやディスカッションを通じて、皆で考えた。

「資源循環の重要性や実践意義の理解が全社レベルで深まると、一人ひとりが納得して行動できるようになり、取り組みが今以上に具体的になっていくと思います。研修で得た知識やノウハウを、短期経営計画に反映させ、地域社会と共に持続可能な観光産業を目指したい」と安川さんは語る。

複数の参加者がテーブルを囲み、手袋を着用してパソコンを分解・分別している作業風景。基板や部品、工具、資料が並び、実習形式で取り組んでいる様子。
研修ではパソコンの解体も体験。資源循環の課題を一人ひとりが自分ごととして捉えるきっかけに。

PR効果も大きかった「環境月間」や「竹灯籠」

ホテルを利用する人たちにも、環境問題やSDGsを楽しく学んでもらおうと、8月には初めての「環境月間 ~サステナ SHIROYAMA」を開催した。テーマは「海と森の繋がり」。ホテルが立つ城山に降った雨は森を抜け、桜島が浮かぶ錦江湾へと流れていく。森と海は一体だ。その営みの中で企業活動を行うホテルとして貴重な自然を守る責任を自覚し、地域の人たちと共に環境問題を考えたいとさまざまなイベントを企画した。

海洋プラスチックごみで作った楽器によるロビーコンサート、パネル・ブース、廃材・自然素材を活用したアート作品展示、子ども向けのワークショップ、SDGsクイズラリー、そして自然や生き物への敬意を込めた作品で知られる児童文学者、椋鳩十にちなむ「ハトの日ウィーク」など、楽しい催しが満載で、夏休みの親子連れにも大好評だった。ホテル主体の環境イベントは、鹿児島県では先例がないという。「環境月間」はその年の「脱炭素チャレンジカップ」鹿児島県大会で、優秀賞を受賞した。

シェフに指導を受けながら、子どもたちがコック帽と手袋を着けて料理体験をしている様子。プレートに料理を盛り付けている。
調理体験やテーブルマナーを学ぶキッズアカデミーを開催。シェフと共にサステナブルメニューづくりにも挑戦。
来場者の前で3人が演奏している様子。そのうち2人はフルートを演奏している。背後には作品展示や「サステナ SHIROYAMA」の案内パネルが掲示されている。
環境アート団体「色響」によるロビーコンサート。自然や環境をテーマにした音楽が館内にやさしく響き渡った。

冬季の活動では、「放置竹林対策を兼ねた環境配慮型イルミネーション」が注目された。竹林面積全国1位の鹿児島県では、放置竹林の問題が深刻だ。そこで、特に竹林が多い出水市の商工会議所の協力を得て、ホテルスタッフが現地に赴き、地元の人たちと「竹灯籠」を制作。LED電球100%で省電力化を図り、樹木に直接電線を巻き付けないことで、環境負荷も抑えつつ、冬のホテルの庭園を趣のあるライトアップで彩った。

竹灯りが並ぶ夜の遊歩道。木々に囲まれた階段の先に、街の夜景が広がっている。
倉庫内で複数の女性が並び、装飾加工された竹を手に持って笑顔で立っている様子。

地元の竹を生かしたライトアップが温もりある空間を演出。スタッフ手作りの竹灯籠も展示された。

一連の取り組みについて、最後に安川さんに総括してもらおう。

「昨年は初めての試みが多かったので、部署の垣根を超え、全社体制でさまざまな活動に取り組みました。地域との連携も例年以上に活発だったと思います。夏の環境月間、竹灯籠による冬のライトアップともに、県内外から多数のお客様が来館されました。当社のSDGsの取り組みを知っていただくよい機会になったと喜んでいます。今後も一つひとつの活動をしっかりと根付かせて、資源循環型ホテルを目指してまいります」

取材・文/田中洋子
(2026.04 Vol. 755)

SHIROYAMA HOTEL kagoshima(公式サイト)
https://www.shiroyama-g.co.jp/index.html