ホテリエの流儀 プロの仕事術

「一生に一度の大切な日」をお手伝いできる
ウエディングプランナーの喜び

ホテルを支える多彩なプロフェッショナルが、仕事の魅力やモットーについて語る連載企画。今回のテーマは「ウエディングプランナー」。ホテルニューオータニ(東京)で、プランナーとして働いた経験を持ち、現在はマーケティングの立場でウエディングに携わる、松木雄一郎さんにお話を伺いました。

庭園でファイルを手に、笑顔で案内するホテルスタッフ。

お客様の希望に、少しでも近づけるように

──ウエディングプランナーのお仕事について教えてください。

仕事の内容は、大きく分けて二つあります。まず、ホテルニューオータニ(東京)に初めてご来館される、新郎新婦のおふたりへの接客です。主にウエディングフェアを通じて、おふたりの結婚式のイメージをヒアリングし、当社ならどのようにして実現できるか、施設やプランをご紹介しながらご提案します。もう一つは、「当社で披露宴をする」と決めてくださったお客様と打ち合わせを重ねて、料理や会場コーディネート、演出などの具体的な内容を決める打合せです。

この二つをそれぞれ別のスタッフが担当する分業体制の会場もあります。でも当社では、会場決定までの過程で交わされるお客様と接客スタッフの会話や、そこから生まれる信頼関係を大切にすることで、結婚式当日をより安心してお迎えいただけると考え、基本的には接客スタッフが打合わせまで一貫して担当する体制を取り入れています。

──コロナ禍も体験されたそうですね。

はい。あのときは、どんな規模の披露宴にするか、そもそも披露宴自体を行うかどうかなど、方向性も含めてご相談いただくケースも多かったので、そうしたお客様にどう寄り添うかという難しさがありました。誰も経験したことがないケースでしたが、少しでもお客様の不安を取り除けるようスタッフ同士で知恵を出し合い、力を尽くしました。担当するお客様には、「おふたりが安心してゲストを招待できる日が来るまで待ちましょう」とお声がけし、結婚式を諦めない気持ちを持ち続けていただけるよう向き合うことに努めました。当初の予定どおりに実施できない結婚式も数多くありましたが、無事にすべての結婚式を実施することができました。

──それ以外で難しかったことはありますか。

お客様の希望は最大限実現させたいのですが、やはり会場の制約などで希望の演出を100%実現することが困難な場合もあります。そんなときは、なぜその演出を叶えたいのか、お客様の想いをじっくりヒアリングし、期待以上と思っていただけるアイデアをご提案することを心がけていました。

例えば、SNSを見て「結婚式当日、あの場所でこんな写真が撮りたい」と具体的なイメージを抱いてこられるお客様もいらっしゃいます。しかし、ご希望どおりの撮影をすべて当日に行うと、撮影時間が長くなり、ゲストをお待たせしてしまうことがあります。それでは、ご参列の皆様にとって良い結婚式だと感じていただけないと考え、ゆっくり撮影だけに集中できる「前撮り」をご提案しました。ご希望以外の撮影場所にもお連れすると、「こんな素敵な場所があったのですね」と喜んでいただき、一生の記念となる写真を残していただくことができました。

──特に印象に残っている披露宴はありますか。

列席者が1000人近くという、非常に規模の大きい披露宴を担当させていただいたことがあります。芸能関係の方だったので著名なゲストもたくさんいらっしゃいましたし、席に置くお名前札一つとっても1000枚近くを確認しなくてはいけません。スタッフ総出で作業にあたり、いつも以上に気を配ることが多くて緊張しました。しかし、一番緊張されているのは新郎新婦やそのご家族。安心して当日を迎えられるよう、それぞれの打合わせに挑みました。私ひとりではなく、シェフや会場演出、装花にテーブルコーディネートなど、館内のさまざまなプロフェッショナルの総合力で、前例にない規模の披露宴を無事に結ぶことができたと思っています。

「任せてよかった」と言ってもらえる喜び

──お客様からいただいた言葉でうれしかったことがあれば教えてください。

やはり披露宴が終わった後、「松木さんに任せてよかった」と言っていただけたときです。新郎新婦のおふたりだけでなく、ゲストや親族の皆さまから「いい披露宴でした」と言ってもらえたときも「頑張った甲斐があった」という気持ちになります。

また、新郎新婦のおふたりが後日、記念日の食事などでホテルに来てくださることがあるんです。「今もあの披露宴のことをよく話すんですよ」などと言っていただいたときは、「一生に一度の特別な日をお手伝いできた」という実感が持ててとてもうれしかったです。

──お客様に「任せてよかった」と思ってもらえるように心がけていたことは?

お申し込みをいただいてから披露宴当日まで、長いお客様だと1年半近い期間のお付き合いになります。その間は常に、お客様が不安に思われないような対応をしようと思っていました。お仕事や私生活と並行して準備を進められる新郎新婦のご負担にならないよう、丁寧かつ効率よくご準備いただけるような打合せや、スムーズなメール対応を心がけました。

また、お客様はSNSなどでたくさん情報を集めていらっしゃる方がほとんどです。その方たちが実際にどんな情報に接していらっしゃるのか、常にアンテナを張っておくようにしていました。自社のことだけ見ているとどうしても発想が固まってしまうので、他社の情報をチェックしたり、休日に他のホテルを見に行ったりすることもありました。

──カジュアルウエディングなど、結婚式や披露宴も多様化している時代ですが、その中でホテルウエディングの強みとは何でしょう。

特に最近は、自分たちが主役になるというよりも「ゲストに感謝を伝えたい」とおっしゃるお客様が多いように感じます。そのときに、クオリティの高い食事やサービスで皆様に喜んでいただけるという安心感を提供できるのは、ホテルならではだと思っています。

──今は異動されてマーケティング課にいらっしゃるそうですが、ウエディングプランナーとしての経験は生きていますか。

私は主に婚礼の販促やホテル主催のイベントなどを担当しているのですが、ウエディングプランナーとして現場で経験を積んだことで、常に「お客様目線」と「現場目線」の双方を意識できる面があるように思います。ウエディングプランナーとしてお客様と接していたときにお伺いした生の声は、当社がウエディングにおいてマーケットインしていくうえでとても重要な情報ですので、現在の職務に就いた際にとてもありがたいことだと感じました。また、宿泊や宴会などホテルのあらゆる部署と連携する必要があるのも今の仕事と共通しているので、その意味でも経験は生かせていると感じます。

──ウエディングプランナーとして働く若いスタッフにメッセージをお願いします。

ウエディングプランナーほど、お客様と密に関わり、感謝の言葉を直接いただける仕事はなかなかありません。もちろん、一生に一度の大切な日をお預かりしているという意味でプレッシャーは大きいですが、その分うまくいったときの達成感も大きい。以前、館内を歩いていた際に、過去に担当させていただいたお客様がお子様連れで歩いていらっしゃるのにばったり会ったことがあるのですが、そんなふうに「生涯顧客をつくる」ことができる、お客様と長くお付き合いできるのもウエディングプランナーならではかと思います。

そして、経験を積めば積むほどお客様のニーズに合った多様なご提案ができるようになって、より面白さが見えてくる仕事でもあります。最初は不安も大きいかもしれませんが、ぜひ自信を持って取り組んでほしいと思います。

1日のスケジュール

  • 出社

    • メールチェック
    • 資料の準備 など
  • 婚礼打合せ

  • 休憩

  • 婚礼本番立会

    • 新郎新婦、親御さまへのご挨拶
    • ファーストミートの立会
    • ロケーション撮影の立会
    • ウェルカムグッズのセッティング
    • 会場チェック
    • 進行の打合せ
  • 挙式開式

  • 披露宴開宴

  • 披露宴お開き

  • 退勤

スケジュールはウエディングプランナー時代の一例です。

肖像
Profile

松木雄一郎さん
ホテルニューオータニ(東京)マーケティング課
2019年、株式会社ニュー・オータニに入社。ベル業務で接客の基礎を培い、レストラン勤務を経て2020年より宴会予約課へ。約5年半にわたりプランニングや顧客対応に携わり、多様なニーズに応える提案力を磨く。現在はこれまでの経験を生かし、マーケティングの立場からウエディングに携わるほか、アウトドアプールやお正月といったシーズナルイベントの企画・運営業務に従事。現場で培った視点と柔軟な発想力を強みに、お客様の記憶に残る魅力的な空間・体験づくりに努めている。

取材・文/仲藤里美
(2026.08 Vol. 757)