「身だしなみルール」見直しの動き

特別な空間づくりにひと役買う
「身だしなみ」へのこだわり

メズム東京、オートグラフ コレクション

ホテルのブランドコンセプト「TOKYO WAVES」に基づき、著名デザイナーが手掛ける旗艦ブランドとコラボレーションしたユニフォームで独特の世界観を体現するメズム東京。そのスタイリッシュな佇まいと一体となる個々のタレントの身だしなみにもまた、ブランド価値に裏打ちされた独自のスタイルがある。

黒を基調としたユニフォームを着たスタッフが並ぶ様子

洗練された装いの「タレント」が働くホテル

東京都港区竹芝の複合施設、ウォーターズ竹芝に位置するメズム東京、オートグラフ コレクション(以下、メズム東京)は、ベイエリアと浜離宮恩賜庭園を一望できるロケーションと、上質な空間が人気のモダンラグジュアリーホテルだ。

ホテルに足を踏み入れて、まず目に入るのは、タレントたち(スタッフのこと)の洗練された身だしなみだ。黒で統一されたユニフォームは、体のラインが隠れるような、ゆったりとしたシルエットのシャツとパンツのセットアップ。これは、世界的な評価を受けているヨウジヤマモト社が手掛けたもので、ジェンダーレスかつスタイリッシュなユニフォームの先駆けとして業界の内外で広く知られている。

目を引くのはユニフォームだけでない。各タレントの髪型やメイクも、控えめながら、各自の個性を際立て、清潔感とクールな雰囲気を印象づけるのにひと役買っている。

メズム東京では、2020年の開業以来、「TOKYO WAVES」というブランドコンセプトを掲げている。これは、絶えず変化し続ける大都市・東京の鼓動と息吹を表す言葉で、アート、音楽、香り、美食、空間、情景などを通して、ホテルの利用客にまちの躍動感を五感で体験してほしいという思いが込められているという。

マーケティング コミュニケーションズ ディレクターの杉元志穂さんはこう語る。

「私たちは、ホテル全体を舞台に見立てて、スタッフを『タレント』、業務にあたる現場を『オンステージ』と呼んでいます。ハイブランドのユニフォーム採用や身だしなみへのこだわりも、タレントたちが胸を張って働ける舞台を演出するための、仕掛けの一つだと考えています」

桜の装花や天井のアートが配された、開放感のあるホテル館内。
大きな窓から東京の街並みを一望できるホテル館内。桜の装花と天井のアートが配されている。

館内には「TOKYO WAVES」を体現するスタイリッシュな空間が広がる。

ホテルの品格にふさわしい身だしなみをつくる

身だしなみについては、基本のヘアスタイルや髪色、アクセサリーの色や大きさの基準などを大枠で定めたガイドラインが存在する。ただし、各人の顔の形や目鼻立ち、髪の色によっても似合う髪型やメイクは異なるため、それぞれの個性を際立たせるアドバイスにも力を入れている。

タレントは入社時に、会社が契約するヘアメイクのプロフェッショナルから、本人の個性が最も輝くようなヘアアレンジとメイクを学び、それをメズム東京の世界観として表現できるよう、日々各自が研鑚を重ねている。

自分にもっとも似合う、それでいてメズム東京にふさわしいクールなスタイルをプロの視点から提案してもらえるとあって、「専属のスタイリストがついているかのよう」とタレントたちからも好評だ。さらに、洗練されたスタイルで働けることは、タレントたちにとって、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながっているという。

個性を生かした多様性を感じさせるスタイリング

メズム東京で働くタレントの髪型や髪色はそのタレントの個性に合わせているが、基本的には東京モードスタイルにならい、黒か地毛の色だ。男性タレントの中には、ひげを蓄えている人もいる。そこには、ホテルの制服をまとったタレントの一員でありながら画一的ではなく、各自の個性を生かした多様性がある。そのスタイルは、細心の注意と不断の努力によって作り出され、維持されているものだと杉元さんは語る。

「一見すると、身だしなみの縛りが緩いように見えますが、タレントたちは、入念にヘアメイクの指導を受けていて、セルフケアの手間もかかります。むしろ、そのメズム東京の世界観を体現するので他のホテルよりも厳しいといえるかもしれません」

タレント各自のスタイリングは、各部署のマネジャーが日々チェックをするほか、週に一度ほど、ヘアメイクのプロフェッショナルが施設内を巡回して、改善すべき点がないかを確認。身だしなみに乱れがある場合は、個別に改めてヘアスタイルやメイクの指導が行われるという。

ヘアメイクの指導を受けるメズム東京のタレント
定期的なヘアメイク講習で身だしなみをブラッシュアップ。
ホテルのエントランスでゲストを迎えるメズム東京のタレント
カーテンコールに着想を得た独特の所作でお客様をお出迎え。

ゲストを魅了するためのブランド戦略として

身だしなみに加えて、タレントの所作にもこだわりがある。ホテルでは、利用客をお出迎えする際、手のひらを胸に当てた姿勢でお辞儀をする。これは、舞台のカーテンコールに着想を得たもの。また、ホテルを訪れたゲストへのファーストコンタクトでは「ようこそ、メズム東京へ」、夜の時間帯に見送る際には「素敵な夜を」といった定型挨拶もルール化されている。

毎日行うブリーフィングでも、こうした所作や挨拶について繰り返し触れることで、意識づけを徹底している。

洗練された装いをしたタレントたちの優雅な身のこなしは、まさに、舞台上に立つ俳優を連想させる。身だしなみや所作に関する取り組みに力を注ぐ理由について、杉元さんは次のように説明する。

「私たちはゲストの皆様に、単なるリピーターではなく、メズム東京のファンになってほしいと願っています。訪れた人の五感を刺激して、ワクワクするような空間と体験を提供することを目指しています。タレント一人ひとりが魅力的に見えるよう身だしなみを整えることは、ある意味で、そのためのブランディングであるといえます」

事実、メズム東京で働くタレントの身だしなみは、初めて訪れたゲストに、ホテルを強く印象づけるのに役立っているようだ。

取材・文/柴野 聰
(2026.08 Vol. 757)

メズム東京、オートグラフ コレクション(公式サイト)
https://www.mesm.jp