技能五輪国際大会

世界を目指す若きホテリエの挑戦
「ホテルレセプション職種」日本代表選手選考会

技能五輪国際大会

世界中の若手技能者が集まり、さまざまな分野で技術を競い合う2年に一度の「技能五輪国際大会」。次回の第48回大会は、2026年9月に中国・上海での開催が予定され、世界各国・地域の予選を勝ち抜いた22歳以下(一部の職種は25歳以下)の代表選手が出場する。

ホテルのフロント業務を競う「ホテルレセプション職種」は、2019年のロシア・カザン大会から加わった新しい競技で、日本では中央職業能力開発協会(JAVADA)の要請を受けて、日本ホテル協会が代表選手の選考を担っている。

上海大会に向けた日本代表選手選考会は、2025年11月5日にパレスホテル東京で開催された。冒頭では、日本ホテル協会の研修委員会委員長を務める中内仁氏(神戸ポートピアホテル代表取締役/「ホテルレセプション職種」分科会長)があいさつに立ち、「これまでの準備の成果を存分に発揮してほしい。ホテルで働く方々の励みとなる挑戦に期待したい」と激励の言葉を述べた。

選考会には、全国6ホテルから一次選考を7名のホテリエが参加し、上海大会への切符をかけて熱戦が繰り広げられた。今回の競技は、国際大会の仕様により近づけるため、使用言語は英語のみ。これまでのフロント対応に加えて、グループ討論やバックオフィス業務も審査に盛り込まれ、より総合的な実務能力が問われる内容となった。

フロント対応では、出場者は事前にどのようなゲストが訪れるか知らされておらず、臨機応変な対応力が求められた。
フロント対応では、出場者は事前にどのようなゲストが訪れるか知らされておらず、臨機応変な対応力が求められた。

フロント対応では、出場者は事前にどのようなゲストが訪れるか知らされておらず、臨機応変な対応力が求められた。

フロント対応の競技では、複数のゲストが同時に訪れるなか、体調を崩したゲストからの電話対応も重なり、瞬時の判断と高度な接客スキルが求められた。グループ討論では、ゲストがフロントで待つ時間を快適に過ごせる工夫について英語でディスカッション。発想力と高いコミュニケーション力が問われた。非公開で行われたバックオフィス業務では、メール対応など実務に即した課題が審査対象となった。7名の出場者はそれぞれの個性を生かしながら、おもてなしの心に満ちた接客を披露し、その姿は観客を大いに魅了していた。

英語でアイデアを出し合うグループ討論。
英語でアイデアを出し合うグループ討論。
バックオフィス業務は非公開で行われ、メール対応などが審査の対象となった。
バックオフィス業務は非公開で行われ、メール対応などが審査の対象となった。

すべての審査が終わり、結果は以下の通り発表された。

第1位 廣瀬 椿奈さん(帝国ホテル 東京)
第2位 港 心音さん(帝国ホテル 東京)
第3位 宮﨑 亜美さん(名古屋マリオットアソシアホテル)

中央が優勝した廣瀬椿奈さん、右は第2位の港心音さん、左は第3位の宮﨑亜美さん。
中央が優勝した廣瀬椿奈さん、右は第2位の港心音さん、左は第3位の宮﨑亜美さん。

フロント対応の審査を担当した行方明美氏(The Okura Tokyo/コンシェルジュ アドバイザー)は、審査過程で活発な議論が交わされたことを明かし、「出場者のみなさんの情熱を見せてもらった」と健闘を称えた。バックオフィス業務を審査した秋本与野氏(帝国ホテル 東京/チーフコンシェルジュ)も、「難しい問題もあったと思うが、一つひとつ真摯に返事を返してくれて、審査のしがいがある内容だった」と評価した。

優勝した廣瀬椿奈さんは、これまで支えてくれたホテルのサポートチームへの感謝の気持ちを述べるとともに、「国際大会でも全力を尽くしたい」と意気込みを語った。今後は、2026年の国際大会に向けて、日本ホテル協会のバックアップのもと、世界で戦えるスキルを磨くための研修プログラムに取り組む予定だ。日本のおもてなしの心が国際舞台でどのように輝くのか、期待が高まる。その姿は、次世代の若きホテリエにとって大きな刺激となり、新たな挑戦へのとびらを開くきっかけとなるはずだ。

取材・文/編集部 撮影/市来朋久
(2025 10/11/12 Vol. 753)