ホテリエの流儀 プロの仕事術

人とのつながりをサービスの力に
信頼を紡ぐホテルのセールス

ホテルを支える多彩なプロフェッショナルが、仕事の魅力やモットーについて語る連載企画。今回スポットを当てるのは「セールス」。オークラ東京で営業を担当する瀬戸翔太さんは、丁寧なコミュニケーションを重ねて、お客様との信頼を築いてきました。人とのつながりを力に変え、「またお願いしたい」と言われるセールスの極意に迫ります。

オークラ東京のラウンジで、紺色のスーツ姿の男性が黒いファイルを抱え、笑顔で片手を上げて室内を案内している。後方には障子を思わせる窓と赤い椅子が並ぶ。

お客様を知り、最適なアプローチの方法を模索する

──まずは、ホテルにおけるセールスのお仕事について教えてください。

オークラ東京のセールス部門は、宴会、宿泊、料飲(レストラン)など、ホテルが提供する商品を幅広く取り扱っています。国内の法人から海外の法人・個人まで、担当するお客様から寄せられる「オークラ東京を利用したい」というあらゆるご要望にお応えすることが私たちのミッション。会議やパーティーといった宴会利用はもちろん、ご宿泊やご会食まで、ニーズに合わせてホテルのさまざまなサービスをご提案しています。

──具体的に、どのような業務を行っているのでしょうか。

国内法人に対する営業では、既存のお客様への訪問や案件に関するお打ち合わせ、新規開拓など、いわゆる「外回り」を行います。また、ホテルの客室や宴会場、レストランをご覧いただくお下見のご案内や、当日のアテンド、これらに伴う事務作業もセールスの仕事です。案件が決まったら終わりではなく、実施当日のサポートや終了後のフォローまで、長いスパンでお客様と信頼関係を築いていくことが、私たちの大切な役割になります。

海外のお客様に対しては、ホテル関係者や旅行代理店が集まる商談会やロードショーなどに参加するほか、現地の法人を訪問するセールスコールも行います。直接お会いすることが難しい場合は、電話やメール、オンラインでのやり取りを重ねながら、お客様のニーズをできるだけ細かく把握するようにしています。

──クライアントの業界や特性によって、営業のアプローチも変わりそうですね。

確かに、大きく異なります。業界によって慣習やしきたりが違いますし、同じ業界でも企業文化や担当者の好みはさまざまです。レスポンスの速さを重視されるお客様もいれば、時間をかけて提案を練り、直接会って話すことを好まれる方もいます。まずはできるだけたくさんのコミュニケーションを重ね、お客様について知ることが重要です。

例えば、医療関係のお客様の場合、日中は診療などに集中されるため、お打ち合わせやご連絡は夜間や休日になることが少なくありません。お忙しいからこそ、迅速な対応が求められる一方、日頃から人と対面する機会が多い職種のため、短い時間でもお会いして直接コミュニケーションを取ることが大切になる場合もあります。

──セールスにおいて、瀬戸さんが心がけていることは、どんなことでしょう?

仕事が決まるまでの段階では、ホテルの魅力をお伝えするだけでなく、「自分自身を覚えていただく」ことも意識しています。例えば、私は「翔太(しょうた)」という名前ですが、海外のお客様には「Shoppy(ショッピー)」というイングリッシュネームを使っています。「happy」を想起してもらえるので、覚えていただきやすいのです。まずは私という人間を知っていただき、親しみを持っていただく。さらに、お客様の事業や担当者についても理解を深め、リスペクトの気持ちを持って接することを心がけています。

また、営業として、自分たちが提供する商品をできるだけ深く知ることも大切にしています。宴会場だけでなく、レストランや客室、館内の意匠に至るまで、ホテル全体を理解しておくことで、お客様のニーズに応じた提案の幅が広がるからです。例えば、希望される宴会場が埋まっていても、客室やレストランの個室など、別の選択肢をすぐにご提案できれば、新たな可能性が生まれます。ホテルのさまざまな魅力を知り、お客様にとって最適な代案を考えられることも、セールスの力だと思っています。

仕事が決まった後は、社内のコーディネーターに具体的な業務を引き継ぎますが、任せきりにするわけではありません。常に進捗を確認し、お客様の近くまで行く機会があれば顔を出します。コーディネーターと二人三脚、お客様を含めれば三人四脚。社内のスタッフやお客様と一緒に、最後まで宴会をつくり上げていくという気持ちで臨んでいます。

そして、宴会が終わった後も仕事は続きます。実際にお客様の元へ足を運び、良かった点だけでなく、改善すべき点も含めてお話を伺います。そうした一つ一つの声を次の仕事につなげていくことも、セールスの大切な仕事だと認識しています。

泥臭いコミュニケーションが信頼関係をつくる

──セールスとして特に必要な資質やスキルは何だと思われますか。

やはり、お客様との信頼関係を築く力だと思います。そのためには、スピーディーなレスポンスやご要望に沿った提案力も必要ですが、何より、直接お会いしてコミュニケーションを取ることが欠かせません。特に経験の浅いうちは、手間を惜しまずお客様の元へ足を運ぶ「泥臭さ」が必要です。企画書やメールだけではくみ取れないニーズも、直接お話しすることで見えてくることがあります。それは、お客様だけでなく、現場のスタッフや他部署との連携においても同様です。人と人とのコミュニケーションを大切にすることが、セールスの大きな力になると考えています。

──やりがいを感じるのはどのような瞬間でしょうか。

一番うれしいのは、最初にお手伝いした仕事の枠を超えて、新たなご相談をいただくことです。以前、ご退職の記念パーティーを担当したお医者様から、その後、ご家族でのお食事会、さらにはお嬢様お二人の披露宴までお任せいただいたことがありました。お仕事上の大切な節目だけでなく、ご家族の人生の節目にも関わることができたのは大変うれしく、今でも強く印象に残っています。

最初は「オークラ東京」という大きな看板を信頼してご依頼くださったお客様が、真摯に向き合い関係を築くなかで、「次も瀬戸さんにお願いしたい」と言ってくださる。私個人を信頼して、大切な仕事を託していただける──その喜びこそ、セールスという仕事の何よりの醍醐味ではないかと感じています。

──最後に、ホテル業界を目指す若い世代へメッセージをお願いします。

私は人と触れ合うことが好きで、人との関わりの中で自分自身も成長できたらと思い、この業界に飛び込みました。ホテルには、宿泊、料飲、セールス、マーケティングなど、さまざまな分野のプロフェッショナルがいて、お客様の笑顔のために情熱を注いでいます。サービスは形がないものだからこそ、同じ瞬間は二度と訪れません。お客様の反応も一つ一つ異なるため、常に新しい刺激に満ちていて、自分の仕事に誇りを持って高め合える環境だと思います。私自身、この10年間、人との関わりを通して成長してこられたと実感しています。毎日が新しい出会いにあふれるホテルという現場で、ぜひ一緒に切磋琢磨していきましょう。

1日のスケジュール

  • 出社

    • メール確認および返信対応
    • 国内外の最新業界ニュース・時事情報の収集
    • 課員との日常的なコミュニケーション(雑談を通じたコンディション把握・情報共有など)
  • 朝礼、始業

  • 外出

    • お客様への挨拶や案件の相談などの営業活動
  • 出先でランチ

  • お客様への訪問

    • 宴会終了後の御礼
  • 帰社、館内案内・打ち合わせ

    • 宴会場、客室の下見のためにご来館したお客様の対応
  • 新規問い合わせやメール対応、翌日の準備

  • 退勤

※スケジュールはあくまでも一例です。

肖像
Profile

瀬戸翔太さん
オークラ東京 営業部セールス課所属
2016年、株式会社ホテルオークラ入社後、オークラ東京に配属。1年間のプライマリー研修にて各セクションでホテル業務の基礎を習得後、客室予約課およびゲストサービス課(フロント)での現場勤務を経て、2022年7月に営業部セールス課へ異動、国内法人営業に従事。2025年7月よりチームリーダーとして国内法人営業に加え国際営業を兼任し、アジア太平洋地区全般を担当。「人に寄り添う」「人に、仕事に、親切であれ」を信条に、多種多様な業界の背景や国・地域の文化の違いを深く尊重し、柔軟なアプローチで、確固たる信頼関係を構築する営業活動に努めている。

取材・文/編集部
(2026.10 Vol. 758)