
児童養護施設の子どもたちをホテルに招待
2025年1月に創業90周年を迎えたリーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション。それを機にスタートさせた、「未来をつくる子どもたちへ」と題した取り組みで表彰を受けた。
「地域で長くご愛顧いただいてきたホテルとして、地域社会に何か恩返しをしたい。地域の未来を担っていく子どもたちを応援したい。そう考えたのが始まりです」。同ホテル総支配人(取材当時)の中川智子さんはそう話す。
目指すのは、地域の子どもたちに、未来に向けて励みになるような体験や学びを提供すること。そのために、自分たちに何ができるか。総支配人直属の部署である運営推進室が中心になって、ディスカッションを重ねた。
その中から生まれてきたアイデアの一つが、近隣の児童養護施設の子どもたちを招いてのチャリティマナー講習。中学や高校に入学する子どもを対象に、接遇についての社内資格を持った従業員が講師となって、挨拶の仕方やテーブルマナーを学んでもらう。2025年度は81人、2026年度は51人の子どもたちを招待して実施した。
「児童養護施設にいると、卒業や入学の際にもなかなかお祝いのイベントなどを体験できないとお聞きしていたので、『ホテルからのお祝い』の意味も込め、大阪市こども青少年局の協力を得て開催しました。テーブルマナーは、当ホテルの料理長が腕を振るったフランス料理のランチコースを食べながらの実践講習。『こんなおいしい料理は食べたことがないです』という声もいただきました」
また、児童養護施設で育った子どもたちは、原則として18歳になると施設を出て自立しなくてはならない。それぞれに就職したり、大学に進んだりするものの、環境の激変で不安を抱えるケースが多いという。そうした子どもたちへのサポートも行おうと、児童養護施設の卒業生を支援する社会福祉法人と協力し、施設を卒業した子どもたちが集まれる場としてのクリスマスパーティを実施。ホテルの文化教室のプログラムの一つ、携帯ストラップ作りのワークショップを体験してもらった後、ビュッフェパーティを開催した。
「マナー講習もそうですが、参加した先輩たちを見た下の学年のお子さんたちの期待に応えられるよう、なんとか毎年継続していきたいと思っています。また、特に卒業生の支援に関しては、一度パーティを開いて終わりではなく、もっと持続的、継続的な支援が必要なのだろうとも感じていて。なかなかまだそこまでは実現できていないのですが、将来的には他の企業や団体も巻き込んで、地域全体のムーブメントのようにしていけたら、と考えているところです」


能登の子どもたちと関西の子どもたちをつなぐ
ホテル単体ではなく、他の企業と協働しての取り組みにも積極的に参加している。近隣に新設された小中一貫校に対しても、地元企業の一つとして学習に協力した。小学生向けには、「ナカノシマクエスト」という社会科見学プログラムに協力し、保護者も同行しての館内見学ツアーを実施。中学生に対しては探究学習に協力し、同ホテルのサステナビリティへの取り組みなどについて解説した後、「全ての人にとって魅力あるホテル」をテーマにアイデアを出して話し合う場を設けた。
「海外からのお客様向けに、もっと分かりやすいピクトグラムを作る」「お客様を学校に招いていろいろな体験をしてもらう」といった多彩なアイデアが出され、ホテル側が学ぶことも多かったという。「最終日には、それぞれの成果を発表するプレゼンテーション大会が開かれたのですが、皆さん非常に堂々と発表されていて。成長の糧になる場をつくれたのかなと感じました」と中川さんは振り返る。

また、2024年1月の能登半島地震の被災地の子どもたちを、大阪・関西万博に招待するプロジェクトにも、大阪市内の複数の企業と共に取り組んだ。ホテルとして宿泊場所を提供するとともに、ホテル内で「大阪の思い出」をテーマに絵を描くワークショップを実施。地元・関西の子どもたちにも参加してもらい、交流の場を設けた。
能登の子どもたちには万博の思い出を、関西の子どもたちには大阪を紹介する絵を描いてもらい、完成した「元気のぼり」作品はホテルのロビーに展示。後日、能登の子どもたちからは「楽しかった」という手紙がいくつも届いたという。
「もちろん、それだけで被災した傷が回復するわけではありませんが、短い時間でも関西の子どもたちと楽しい時間を過ごしてもらえたことには意味があるのではないでしょうか。今後、ワークショップで知り合った友達に会いに互いの地域を訪れる、なんていうことがあったらいいなあ、と考えたりしています」
今後、他の地域と関西の子どもたちを結びつけるようなイベント開催の可能性も探っていきたいという。


能登と関西の子どもたちが一緒に絵を描き、忘れられない夏の思い出に。
「喜んでもらいたい」──広がる気持ちの輪
こうしたさまざまな取り組みを通じて、従業員の意識にも変化を感じていると中川さんは言う。
「地域貢献、社会貢献といっても何をしていいのか分からないことも多いと思うのですが、具体的な取り組みを重ねることで、『こんなに喜んでもらえるなら次はこんなことをやったらどうだろう』という発想が生まれてくる。直接は関わっていなかったスタッフからも『次は私も参加したいです』という声が出てきたりと、『喜んでもらいたい』という気持ちの輪が、少しずつ広がっている気がします」
小中学生や児童養護施設の子どもたちと接する中で、改めて自分の仕事の意義を再認識できたという声も多い。イベントなどの当日、現場で参加者と接するスタッフが、前日に改めてサービスの内容を勉強し直したり、終わってから周りの同僚たちと反省会をしたりする様子も見られるという。「お子さんと一緒に館内見学に来られた方からも、『ちょっと格式が高くて入りづらいと思っていたけれど、来てみたらスタッフの方がフレンドリーで、見方が変わりました』と言っていただきました」
同ホテルは創業90周年を迎えた2025年に、世界的なホテルグループ「IHGホテルズ&リゾーツ」のラグジュアリーブランド「ヴィニェット コレクション」に加わった。同コレクションが掲げる、ホテルとして提供すべき価値の一つは「A Means For Good(地域や人にポジティブな変化を導く)」。その「ポジティブな変化」が、少しずつ生まれつつある。
取材・文/仲藤里美
(2026.04 Vol. 755)
リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション(公式サイト)
https://www.rihga.co.jp/osaka