日本ホテル協会 第7回社会的貢献会長表彰

優秀賞
「プラザ」としての矜持で
持続可能な資源循環と共生を支える

京王プラザホテル

都市の高層ビルに囲まれたホテル屋外施設の芝生広場とプールサイドの様子。

捨てないホテルへ。循環を育てる現場力

ホテルと食との結び付きは大きい。京王プラザホテルでも、食品ロス削減の重要性を常に意識し、宴会での食べ残しを減らす「3010運動」など、長年さまざまな取り組みを行ってきた。食べ残した料理をお客様の自己責任で持ち帰る「mottECO(モッテコ)」の普及コンソーシアムには、ホテル業界では2番目に参加。売れ残りそうな料理が手軽に購入(レスキュー)できる「TABETE(タベテ)」といったサービスにも登録している。

ロスを減らす以外に、捨てられるはずの食品に新しい価値を与えてお客様に提供する「アップサイクル」の取り組みも活発で、たくさんの“新メニュー”や“新商品”が生まれている。銘酒「獺祭」の酒粕を使ったパン、自然薯の皮と塩を混ぜ合わせた風味豊かな「薯塩」、抽出後のコーヒー豆を再利用したカクテル、提供できなかったバゲットから生まれたシュガーラスクなどはその一例。ほとんどが、スタッフのアイデアを元に商品化された。

経営企画部SDGs推進課長・杉浦陽子さんは、「それぞれの現場に、『捨てない工夫が何かできないか』と考える土壌ができつつある」と感じている。一方、Doleの「もったいないバナナ」プロジェクトのように、調理の現場に提案を持ち込み、コラボ商品を開発するケースもある。それぞれの立場で考えたアイデアを、協力しながら形にしていく連携に、京王プラザホテルが育んできたSDGsへの真摯な姿勢がうかがえる。

TABETE:レストランなどとユーザーをアプリでつなぎ、「まだおいしく食べられるのに、閉店時間までに売り切るのが難しい料理」を、手軽に購入できる仕組み。

もったいないバナナ:表皮の傷などの理由で“規格外”として捨てられてしまっていたバナナを販売し、食品ロス削減に貢献する活動。

粒あん入りのあんぱんが割られて中身が見える状態で皿に置かれている様子。後ろには「獺祭」と書かれた桝に酒粕が盛られたものが置かれている。
獺祭の酒粕を活用したあんぱん
器に盛られた天ぷらと、添えられた塩が入った小皿の様子。
自然薯の皮と塩を混ぜた薯塩
「もったいないバナナ」ロゴとともに、スライスされたバナナブレッドと紙の型に入った一本のパン。
規格外バナナを使ったバナナブレッド

食品廃棄物から衣類まで、進む資源リサイクル

資源の循環も力を入れている分野だ。厨房排水を処理して、館内のトイレの洗浄水として再利用する取り組みは、25年前から継続している。

厨房で出た野菜屑などは、鶏の飼料としてリサイクル。その飼料で育った鶏の卵を、再び厨房で利用するというループを2025年2月に構築した。また、レストランや宴会場から回収された食用油は、リサイクル処理会社を通して石鹸やインク溶剤などに再利用されているが、将来的には「SAF(持続可能な航空燃料)」への利用にも期待がかかる。

こうした多様な取り組みの結果、現在ではホテル全体から排出される食品廃棄物の約50%が、食品循環資源として再活用されている。

さらに興味深いのが、京王プラザホテルの資源循環の取り組みが、なんと衣類にまで及んでいることだ。館内に「古着回収ボックス」を設置して、不要な衣類を回収しているのである。

「私どもは、9割近くがインバウンドのお客様で、日本で新しい服を購入され、ご不要になった衣類を部屋に置いて帰られる方がとても多いのです。これを何とかしたいと思っていた客室スタッフが、京王線の駅に衣類の回収ボックスがあるのを見て、ホテルでもできないかと声を上げたのがきっかけです」(杉浦さん)

京王電鉄は2024年5月に、「衣類循環型社会のインフラ構築」の実証実験を開始していた。京王プラザホテルもこれに参加して、翌25年2月から回収ボックスを設置するようになった。汚れたり破れたりしていない、洗濯済みの衣類を出すことになっているため、杉浦さんによると、「ランドリールームで洗濯後、そこに設置してある回収ボックスに入れる方が多い」とのこと。回収した衣類は、リサイクル品、リユース品、アップサイクル品として循環される。

古着回収ボックスにセーターなどを入れる女性の様子。
スタッフのアイデアで設置が決まった古着回収ボックス。

社会的貢献は、ホテルの魅力を広げてくれる

京王プラザホテルは、ホテル業界におけるユニバーサル対応の先駆的存在として知られている。1988年に車椅子で利用可能な客室を15室設置して以来、長年にわたり業界を牽引する取り組みを重ねてきた。2018年にはユニバーサルルームをリニューアルし、従来から大切にしている「可変性」や「個別最適化」といったスタイルは踏襲しつつ、ホテルらしい上質でラグジュアリーな空間へと進化させた。

一例として、ご希望を伺い、左右使いやすい側にトイレの手すりをセットする。車椅子の利用者なら、クローゼットのハンガーバーを低い位置に移動させることも可能だ。しかもお客様の状態に合わせて速やかにカスタマイズし、スタッフの労力や負担も少なくて済むよう、必要な道具や機材は全て、客室内の収納場所に目立たないように備え付けてある。

「私たちが『バリアフリールーム』ではなく『ユニバーサルルーム』としてきたのは、特定のどなたかのための専用客室ではなく、すべてのお客様にとって使いやすく快適なお部屋を目指しているからです。サポート用の備品をセットしない状態では、通常のお部屋と変わらない空間として、幅広いお客様にご利用いただいています」

杉浦さんはそう言うと、もう一つ小さな工夫を紹介してくれた。視覚障害があるお客様向けに、バスルームのアメニティボトルに輪ゴムを付けるという。輪ゴムの本数で中身が判別できる仕掛けになっているので、とても分かりやすいと喜ばれている。

車いす利用に配慮した広い客室。ツインベッドとソファ、テーブルが配置され、大きな窓から都市の景色が見える。
バリアフリー対応の浴室で、スタッフが可動式の手すり付きトイレ設備を調整している様子。

一般客室としても利用できるジュニアスイート(ユニバーサルデザイン)。必要な備品はお客様の状態や希望に応じて取り付ける。

カスタマイズ可能な客室がハード面のおもてなしなら、ソフト面で大切にしているのは「心のバリアフリー」だ。以前、日本盲導犬協会の記念式典で182名の盲導犬ユーザーをお迎えした際、スタッフがホテルの入口から宴会場までずらりと並んで、「会場はこちらでございます」と、声のリレーで案内した。実際に出席されたお客様からは、「声かけが一番安心できる。何の心配もなく会場まで到着でき、本当の意味で式典を楽しめた」と喜びの声が寄せられたという。不安や負担を与えないだけでなく、歓迎の気持ちが伝わる温かいご案内だ。

社会的貢献は、義務やコストというより、ホテルの魅力を広げるものだと、杉浦さんたちは考えている。社会課題への真摯な取り組みは、お客様からの共感を呼び、同時にスタッフのやりがいにもつながり、最終的にはホテルの魅力となり、将来にわたって選ばれ続ける理由になっていく。

「私たちの原点は、『さまざまなお客様が集い憩う都市の広場(プラザ)でありたい』という、開業以来受け継がれている『プラザ思想』にあります」と杉浦さん。SDGsや社会的貢献の取り組みの一つひとつにも、「社会的な役割を担うプラザ」としての矜持が息づいていた。

ホテルの研修室で、デフリンピックと聴覚障害者とのコミュニケーションをテーマにした講習を受けるスタッフの様子。モニターには「国際手話にもチャレンジ!」の文字が映し出され、参加者は講師のお手本を見ながら手話を実践している。
デフリンピック東京大会(2025年11月開催)に先立ち、「デフリンピック紹介&聞こえない方々とのコミュニケーションセミナー」を開いて受け入れに備えた。

取材・文/田中洋子
(2026.04 Vol. 755)

京王プラザホテル(公式サイト)
https://www.keioplaza.co.jp/