
美術館に泊まるような唯一無二の体験
2025年10月、名古屋城を眼前に望む立地に開業したエスパシオ ナゴヤキャッスル。名古屋城を想起させる石垣の意匠や、緑青屋根を配した外装をはじめ、組子・漆・箔など日本の伝統工芸を取り入れた内装、名古屋城の本丸さながらの高階層での眺望……など、まさに「21世紀の城」を体現している豪奢なホテルだ。そんな尾張徳川家の繁栄と伝統を感じさせるホテルは、今、世界に誇るアートミュージアムホテルとしても注目を集めている。
「当ホテルは、晴れ舞台として、大切な日や記念日に訪れていただけるようなホテルでありたいと願っています。そこで、人々の心に真の豊かさをもたらすアートに注目しました」と、マーケティング課課長の蒲生真梨子さん。実際、さまざまな人が訪れるロビーはもちろん、宿泊者専用のエントランスや客室などにも、アートによる多様な工夫がなされている。
館内には、麟鳳亀龍や花鳥風月をモチーフにした作品など、約50名の作家によるおよそ400点のアートを展示。各作品のそばに設置された二次元コードにスマートフォンをかざせば、作家のプロフィールや作品の背景などの解説が閲覧できる。館内をめぐりながら、美術館でアートを楽しむのと同様の体験が味わえるのだ。
宿泊者専用のエントランスを進むと現れるのは「鳳凰階段」。ホテルのロゴモチーフと連動した華麗なデザインは、まさに鳳凰が舞い降りるかのような荘厳な雰囲気である。人生の晴れ舞台の一つである婚礼の際のフォトスポットとしても人気が高い。
客室「アートコレクション」は、2024年に開業したエスパシオ箱根迎賓館 麟鳳亀龍に携わった6名のアーティストが担当。唐紙や組子などの伝統工芸と現代感性の融合を意識し、ベッドルームの天井やリビングの装飾など、アートをたっぷりと体感できる設えになっている。



趣向を凝らした客室は、個性豊かなアートが滞在を豊かに彩る。
日本の美意識に触れる非日常空間
「世界に誇るアートミュージアムホテルへ」というコンセプト通り、空間にもふんだんにアートを取り入れている。モロッコ調の幻想的な灯りに包まれた天然温泉のスパ、約20mの屋内プールのモザイクタイルなど、アートと結びついたワクワクするような非日常体験ができるのだ。「お客様からは、『まるで美術館に泊まっているみたい』『細部にも日本の美意識を感じられて、ホテル全体に良い“気”が流れている感じがする』とうれしいお声をいただいています」(蒲生さん)
「The Power of Legend(伝説の力)」というコンセプト通り、日本の古き良き伝統に根差した上質の工芸装飾やアート作品に触れられるエスパシオ ナゴヤキャッスル。オープンから約半年、現在は日本人のゲストが多いが、インバウンドの予約も増加中。日本文化への興味と憧れが高まる中、この流れはさらに加速していくことが予想される。


モザイクタイルが印象的なプールと金色の灯りがゆらめく温泉。アートに包まれながらリラックスしたひとときを過ごせる。
アーティストとゲストをつなぐ架け橋に
人と人を結びつける場所でもあるホテル。エスパシオ ナゴヤキャッスルでも「客室の花器や食器が気に入ったので、ぜひ購入したい」「この作家さんの作品についてもっと知りたい」などの要望に応え、アーティストとゲストを結びつける役割を果たしている。
「1階のショップで一部のアーティストの作品を販売しております。また、学芸員を招いたスタッフの勉強会なども実施しています。気に入った作品をご自宅やオフィスに飾っていただいたり、ギフトやお土産としてお求めいただいたりする情報や機会を、今後も提供していきたいと考えています」
ちなみに、エスパシオ ナゴヤキャッスルでは、すでに名高いアーティストの作品だけを集めているわけではない。食器ブランドのノリタケといった地元の企業や、全国の若いアーティストの作品にも目を向けている。「伝統工芸に携わる企業や数多くのアーティストの皆さんとともに、このホテルをつくり上げているという共創意識には、お客様の心を魅了する熱量があるように感じています。それが、ホテル自体のパワーにもなっていると思います」(蒲生さん)
スタッフも、館内作品の背景や制作過程、説明ポイントなどを学び、宿泊者を対象としたアートツアーを開催している。この努力によって、アート作品は単なる展示に留まらず、対話型体験へとつながり、お客様の満足度をさらに押し上げるだろう。ホテル滞在とアートの融合。これからの時代、ホテル滞在の価値を高める方法として、新しい形で伝統や文化を引き継いでいく方法の一つとして、アートホテルという選択は大きく注目されている。さまざまなアート作品や伝統的な工芸作品とともに高い熱量でお客様をもてなしていくエスパシオ ナゴヤキャッスルは、国内外から熱く支持されるに違いない。


館内の随所に貴重なアート作品が展示され、美術館をめぐるようにホテル散策を楽しむことができる。
取材・文/ひだい ますみ
(2026.02 Vol.754)
エスパシオ ナゴヤキャッスル(公式サイト)
https://www.espacionagoya.com/