いま注目のペットツーリズム最前線

ペットとの極上の旅時間を実現するパイオニア

ホテル椿山荘東京

ホテル椿山荘東京

創業時から続くペットフレンドリーの挑戦

東京都心にありながら、四季折々の自然を豊かに感じられる見事な日本庭園を有するホテル椿山荘東京。ペットを受け入れるサービスを開始したのは、1992年のフォーシーズンズホテル椿山荘 東京の開業当時からだ。ラグジュアリーカテゴリーのホテルとして、ペットフレンドリーに取り組んだ先駆け的存在である。

「ペットは大切な家族の一員という想いに基づいて導入されました」と話すのは、マーケティンググループの橋本あかねさん。現在、約30室をペット同伴で宿泊可能な客室として販売している。犬・猫に限り、1室1匹(体重10㎏、スイートルームは13㎏まで)で、スーペリアルームからスイートルームまで、シティビュー/ガーデンビューなど部屋のタイプを選べる仕様だ。

「ご夫婦とペット」「一人客とペット」の利用が多く、都心のホテル、かつラグジュアリーホテルではペットと滞在できるホテルが限定的なため、「このサービスがあって助かっている」「愛犬と一緒にステイできてうれしい」との声が寄せられている。ペット連れでないお客様とは滞在フロアを分離し、ペット連れのお客様にはペットポリシー(滞在中のルール)を明確に事前説明し、協力を求める。これまで30年以上にわたりペットを受け入れてきたが、トラブルが起きないよう工夫を重ねている。

「全てのお客様が快適に過ごせるように、館内の共用部ではカートやケージを使用していただく、お部屋ではペットをベッドやソファに直接乗せない、バスルームでシャンプーをしないなどのポリシーを説明しています。また、無駄ぼえしないよう、トレーニング(しつけ)の面での協力もお願いしています」(橋本さん)

ペットとの宿泊が可能なゲストルーム。東京にいることを忘れてしまうような豊かな自然に包まれている。
ペットとの宿泊が可能なゲストルーム。東京にいることを忘れてしまうような豊かな自然に包まれている。

ペットとの宿泊が可能なゲストルーム。東京にいることを忘れてしまうような豊かな自然に包まれている。

ホテルステイを楽しめるサービスの拡充

ホテル椿山荘東京は、都心にあるため、郊外型リゾートホテルや一棟貸しのヴィラのような施設と比べると、散歩コースや広いドッグランスペースなどの確保は難しい。それを考慮して、庭園や都心の眺望を楽しめる5階の空中庭園「セレニティ・ガーデン」に予約制のドッグパークを設置。また、スイートルーム宿泊者のためのエグゼクティブラウンジでは、テラス席やレセプションをペット同伴可能とした。

さらに、ゲストが外出する際のペットシッター、美容室などの手配を行うコンシェルジュサービスも充実させ、お部屋での滞在を楽しむためのサービスも提供している。

「写真室のカメラマンがお部屋に伺いして写真撮影をし、大判のプリント写真とデータをお渡しするサービス付きのプランを昨年販売したところ、とても喜んでいただけました」(橋本さん)

クリスマスには、お子様連れのファミリー向けサービスとして、サンタクロースが事前に預かったプレゼントを配るプランを販売しているが、このプランを予約したお客様から、ペットへのプレゼントをサンタクロースから渡してほしいとリクエストされたこともあるそうだ。ペットを子どもや孫のように愛するゲストの利用は少なくない。

また、ペットと一緒に食事を楽しめるよう、インルームダイニングの朝食がついたプラン(ペットフレンドリーステイ)も販売。スイートルームでは、有名ブランドのカートやバウンサーなどの貸し出しサービスも行っている。

こうした有料のオプションも含めたさまざまなサービスの提供は、顧客満足度を上げるとともに、ホテルの収益にもつながっている。

空中庭園「セレニティ・ガーデン(約1500㎡)」内のプライベートドッグパーク(約40㎡)は予約制。30分間、自由にペットを運動させられると好評。
空中庭園「セレニティ・ガーデン(約1500㎡)」内のプライベートドッグパーク(約40㎡)は予約制。30分間、自由にペットを運動させられると好評。

空中庭園「セレニティ・ガーデン(約1500㎡)」内のプライベートドッグパーク(約40㎡)は予約制。30分間、自由にペットを運動させられると好評。

ペットとの思い出づくりに寄与したい

ホテル椿山荘東京が現在、課題としているのがペットの食事の提供だ。

「衛生面・運用面のハードルが高く、現在、館内ではペット用のお食事は提供しておりません。ただ、いまはペットフードもさまざまなタイプのものがありますから、将来的にはおいしくて安全なペット用のお食事を提供できればいいなと思います。そして、今後もペットと一緒に楽しく過ごせるサービス、良い思い出づくりのサービスの拡充を図りたいと考えています」と橋本さん。

SNS時代に合わせたポリシーの徹底と更新も、課題の一つだ。例えば、ホテルステイの様子として、ペットと一緒にベッドで休んでいる写真がインスタグラムなどにアップされたことがあった。ホテルとしては、あらかじめペットはベッドに上げないよう求めているが、必ずしも100%ルールが守られるわけではない。マナーや衛生面を疑問視する世間の声に対して、ホテルとしていかに対処し、お客様にルール順守の協力を求めていくべきなのか。「ペット連れのお客様には、再度ご協力をお願いするとともに、時代に合わせて、ポリシー自体を見直したり、新たに加えたりすることも必要だと考えます」(橋本さん)

パイオニアとして、長年、ペットフレンドリーに取り組んできたホテル椿山荘東京。その蓄積された経験値と「ペットは大切な家族の一員」というスタッフの深い思いは、今後も、ペット愛好家に喜ばれるサービスを次々に生み出していくに違いない。

ペット用のグッズも充実。ペットとの旅がより快適になるよう、さらにサービスを拡充させる予定だ。
ペット用のグッズも充実。ペットとの旅がより快適になるよう、さらにサービスを拡充させる予定だ。

ペット用のグッズも充実。ペットとの旅がより快適になるよう、さらにサービスを拡充させる予定だ。

取材・文/ひだいますみ
(2025 7/8/9 Vol. 752)

ホテル椿山荘東京(公式サイト)
https://hotel-chinzanso-tokyo.jp/