2026年3月25日(水)、日本ホテル協会会員ホテルを対象にリーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションで経営者セミナーを開催した。2025年7月に誕生した大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」の挑戦をテーマに、その運営会社である株式会社ジャパンエンターテイメントの佐藤大介氏(取締役副社長 事業開発本部長)による講演の一部を紹介する。

沖縄を「観光立国」日本のフロントランナーに
2025年7月、沖縄本島北部にオープンして話題を呼んだ大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」。開園当初は、広告イメージと実際のアトラクションとのギャップ、待ち時間の長さなどへの批判の声が目立ったことを記憶している人もいるだろう。
しかし、その立ち上げを担った一人である講師の佐藤大介氏は、「たしかに苦しい時期もありましたが、この事業は必ず成功させなければいけないし、成功すると思っています」と熱を込めて語る。事実、開園以来、新アトラクションの導入、オペレーションの改善による混雑緩和や暑さ対策の強化などの改善策に力を入れてきたことで、来園者の評価は急速に向上しているという。
では、そのジャングリアを立ち上げ、動かしていく上で、大事にしてきたことは何か。かつてホテル業界に身を置き、地方の温泉旅館やリゾート施設の再生プロジェクトを成功させてきた経験を持つ佐藤氏は、「単に『施設をつくって稼ぐ』のではなく、それによって地方を盛り上げ、日本を元気にしたい。その思いはホテルでもテーマパークでも同じです」と述べた。
目指すのは、ジャングリアが、そして沖縄が「観光立国」日本のフロントランナーとなること。そのために、「観光立国」に向けて日本が抱えるさまざまな課題を、先頭に立って解決していきたい。佐藤氏はそう述べ、課題の一つ目にまず「沖縄ブランドの向上」を挙げた。
目的地ではなく、行き先の一つに選ばれる場所
沖縄は現状でも人気の観光地ではあるものの、世界的に見ればハワイやパリのような「ブランド」にはなりきれていない。ジャングリアの存在を通じて沖縄の観光地としてのブランド力を高めるにはどうすればいいのか。佐藤氏らが行き着いたのは「沖縄旅行を最高のものにするテーマパーク」だった。

「ジャングリアはよくUSJや東京ディズニーリゾートと比較されますが、こうしたテーマパークのためだけに大阪や東京へ行く人はいても、ジャングリアのためだけに沖縄に行くという人はまずいない。ジャングリアが目指すべきは『USJや東京ディズニーリゾートに負けないテーマパーク』ではなく、沖縄旅行の行き先の一つとして選んでもらえる、沖縄を訪れる人の求めるものに寄り添える場所だと考えたのです」
では、その「求めるもの」とは何か。ビーチリゾートやマリンスポーツ、三線やエイサーなどの沖縄文化……そこから見えてきたキーワードは、「興奮、贅沢、開放感」だった。「このキーワードをもとに、園内施設の内容を固めていきました。自然の中での大興奮を味わえるアトラクション、贅沢と開放感そのもののインフィニティスパなどがご好評をいただいています」と佐藤氏は言う。
そして、課題の二つ目が「地域交通の利便性向上」。ジャングリアオープンの前年には沖縄でショッピングセンターの開業による大渋滞が発生しており、同じ事態を懸念する声も多かった。しかし、実際には観光ピークとなる夏休みシーズンにも、渋滞はほとんど起きなかったという。
「渋滞が起きるのは、駐車できる、あるいは交差点を通過できる容量よりもたくさんの車が押し寄せるから。公共交通機関の増強や駐車場の分散化、地元自治体と協力して道路の拡張などの対策を行い、車の数をコントロールすることで、うまく防ぐことができました」と佐藤氏は振り返った。

地域とともに「稼ぐ構造」をつくる
課題の三つ目は「地域と『稼ぐ構造』を構築」すること。近年、沖縄では観光客数が急増しているにもかかわらず、県民所得はほとんど増えず、47都道府県中47位のまま。観光によって生まれた利益が県外へと流出してしまっているのだという。
「そうではなく、地域の中で『稼げる』ようにならないといけない。そこでジャングリアは、地元・隣接自治体である今帰仁村や名護市と協定を結んで、土地の魅力を消費者価値に転換することで、一緒に地域を元気にしていこうとしています」
レストランではパイナップルやパパイヤなどの地元食材を使用し、ショップでは地元の民芸品とのコラボによるオリジナルグッズを販売。スパで使用するアメニティも、地元の小さな会社のものだ。地域を元気にしたいという思いからの取り組みだが、結果として客単価の向上にもつながっているという。
そして、四つ目の課題が「観光人材の育成」。冒頭で述べたように、オープン当初は決して大好評とはいえなかったジャングリアだが、その当時から高い評価を得ていたのが「スタッフの対応」だった。「県外のテーマパーク経験者も多いですが、何より地元の人材が活躍してくれている。『人を喜ばせよう』とする沖縄県人気質と、質の高い人材教育が掛け合わさった結果だと考えています」と佐藤氏は言う。
また、「観光業の重要性は認識されているけれど、そこで働きたいという人は多いとはいえない」という沖縄の現状を踏まえ、未来を担う人材の育成にも力を入れようと、周辺の観光施設とともに複数の大学と協定を結び、インターンシップの受け入れも開始している。学生たちを単なる「安い労働力」として扱うのではなく、実践からの学びを得ながら観光施設に貢献してもらおうという試みだ。さらに、インターン先に通う学生の宿泊先にもなる「やんばる高度観光人材育成支援施設(仮称)」のオープンも準備中だという。
「目指しているのは、マニュアル頼りではなく一人ひとりが考え、判断して動ける『目的思考で動く組織』、それぞれの強みを生かし、弱みを補い合って成果を出せる『集団知で勝つ組織』、そして検証と改善を重ねる『高速PDCAを回せる組織』。いくら立派なハードをつくっても、サービスが不十分では全体として成り立たない。それはホテルも同じではないでしょうか」

佐藤氏が何度も述べたように、ホテルとテーマパークにはいくつもの共通点がある。ホテルだけ、テーマパークだけが成功すればよしとするのではなく、それによって地域を、日本全体を元気にしていくことを目指す──。その視点からも学ぶことの多い時間となったのではないだろうか。
取材・文/仲藤里美
(2026.06 Vol. 756)

佐藤大介(さとう・だいすけ)
株式会社ジャパンエンターテイメント取締役副社長 事業開発本部長。株式会社刀エグゼクティブ・ディレクター プランニング&オペレーション。早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、1999年三井物産株式会社入社。人事部、交通プロジェクト部、ニューヨーク駐在等を経て、2004年に株式会社星野リゾートへ。青森の老舗旅館を再生しV字回復を達成するなど活躍。星野リゾートトマム総支配人、取締役就任後はグループマーケティング統括本部長、海外運営統括本部長などを歴任し、2019年に森岡毅氏が代表取締役CEOを務める株式会社刀の一員となる。ジャングリア沖縄における地元地域や自治体、パートナー企業、教育機関らとの連携を推進中。