ホテルのSDGs最前線

グランド ハイアット 東京
地域と、お客様とともに、人々の笑顔を守りたい

ホテルが位置する東京・六本木の街と協力し、観光客や住民が笑顔で安全に過ごすことができる街づくりに尽力するグランド ハイアット 東京。取り組みの根底に流れるのは、ハイアットグループ全体で大切に受け継がれる思いやりの心だ。

商業施設・六本木ヒルズに直結するグランド ハイアット 東京。

約20年かけて拡大させてきた環境と人に配慮した取り組み

最先端のカルチャーを発信する都市・六本木にある「グランド ハイアット 東京」。母体であるハイアットグループが創業以来大切にする「ケア(思いやり)の心」を受け継ぎ、2003年の開業当時より省エネルギー、食品ロス対策、チャリティー活動、ダイバーシティ促進や労働環境の整備などを進め、企業の社会的責任を全方位的に果たしてきた。

2015年に国連でSDGsが採択される何年も前からこういった取り組みを着実に拡大させてきたわけだが、コロナ禍に転機を迎えたという。同ホテルでマーケティングを担当する唐澤沙織氏はこう話す。

「当時、観光客の数が激減し、六本木エリアの活気は危機的なまでに落ち込みました。そこで、これまで続けてきた環境や人に配慮した取り組みにおいても今一度、目の前に視線を戻し、地域に密着したかたちで強化することで、街全体の活気を取り戻したいと考えたのです」

まずは総支配人を筆頭に、役員から若手まで各部署の代表となった社員が、業務の枠組みを超えて意見を出し合う「the SDGs Promotion Project Committee(SDGs推進プロジェクト委員会)」を発足。そこで出たアイデアで実現可能なものをスピーディに現場に落とし込み、新たなサービスや商品を生み出す体制を整えた。

広いロビーにギャラリーを設置しローカルアーティストの作品を展示する試みは、コロナ禍で活動の場を失った芸術家への支援と、地域活性化の双方を目指した企画だ。「当ホテルは通常、宿泊客の8割が外国人なのですが、アーティストの作品を楽しみにロビーを訪れる日本人のお客様が増え、ホテル周辺の往来が活発になりました」と唐澤氏。

ほかにも、六本木の環境美化や地域防犯活動への参加など、委員会発足を機に、地域に根差した取り組みを重点的に強化していった。

アート作品が飾られたロビーの様子。

「街の防災拠点」としての使命感が、被災地支援へと発展

かつての六本木エリアは木造の低層住宅が密集し、災害などで火災が起きると広範囲の延焼が危ぶまれていた。こうした地域課題を解決するため、商業施設「六本木ヒルズ」の建設を中心とした大規模な再開発が行われたという歴史があり、六本木ヒルズの一画を担うグランド ハイアット 東京も「街の防災拠点」としての意識が高い。

港区とは災害時の帰宅困難者受け入れ協定を締結。「逃げ込める場所」としての安全性を保つため、消防署から優良防火対象物認定を受けるほか、定期的な消防訓練や従業員対象の救命講習会なども実施している。

こうした活動を通して従業員一人ひとりの中に醸成された「安心・安全を守る」という意識がベースとなり、東日本大震災発生後は即座にホテルをあげた被災地支援を決定。売上の一部を東北地方へ寄付する宿泊プランを販売するほか、有志の従業員が現地へ赴き、植樹会や子どもとの交流イベントに参加した。

今年の1月9日には、元日の能登半島地震で大きな被害を受けた石川県・富山県の食材を使った特別メニューの提供を、館内2つのレストランで開始。この企画は、地方の魅力を紹介するために定期開催している「グランド グルメ トリップ」の一環で、折しも昨年秋からシェフが現地へ足を運ぶなど、着々と準備が進められていたのだが、開催直前に地震が襲い、断念することも考えたという。

「それでもシェフたちが『被災地の復興に少しでも貢献したい』と、諦めずに生産者の方と連絡を取り、食材を調達可能なものに変更するなどして、なんとか開催にこぎつけました」(唐澤氏)

ホテルの想いはお客様にも広がり、特別メニューを食べた人からは「被災地のために何かしたいけれど、どうしたらいいかわからなかった。食事を通して応援ができてうれしい」という声が聞かれた。また、館内各所に設置している募金箱を通じて、被災地へ寄付する姿も多く見られている。

従業員を対象に定期的に実施される救命講習会。
鉄板焼「けやき坂」と日本料理「旬房」で「グランド グルメ トリップ 富山・石川」を実施。氷見寒ブリや甘鯛、加能ガニなどが味わえる。

お客様のSDGsへの関心を高め、アクションを起こすきっかけを創出

被災地支援に限らず、グランド ハイアット 東京ではこれまでも度々、お客様に社会貢献の機会を提供してきた。

例えば、館内には定期的に募金箱を設置し、戦争や災害などで心に傷を負った子どもたちへ画材を届ける「KIDS EARTH FUND」など、社会課題解決を目指す団体への寄付を呼びかけている。

また、2022年には、規格外のチョコレートや徹底管理された供給源から仕入れたシーフードなど、サステナブルな食材をふんだんに取り入れた「スプリング グリーン メニュー」を提供。配布するメニュー表でも食材調達の背景を解説し、お客様のSDGsへの関心を高めるきっかけを創出したとして話題になった。

「こうした取り組みの中で、私たちが大切にしてきた『ケア(思いやり)の心』を、お客様も同じように持っていらっしゃるということを実感しています」と唐澤氏。今後も、地域、そしてお客様と手を携え、思いやりあるアクションを拡大させていく。

サステナブルな食材を取り入れた「スプリング グリーン メニュー」でSDGsに貢献。

取材・文/編集部

グランド ハイアット 東京(公式サイト)
https://www.hyatt.com/ja-JP/hotel/japan/grand-hyatt-tokyo/tyogh